総合格闘家エンセン井上さんに福永愛美が取材
左・総合格闘家エンセン井上さん 右・福永愛美(スチール撮影:稲田僑晃)
総合格闘家のエンセン井上さんは2008年10月18日大麻取締法違反で逮捕され2008年12月26日懲役10カ月執行猶予3年の判決をうけました。
入国管理局から日本からの強制退去の命令を下される可能性がありましたがファンから9000人の署名が集まった事もあり2009年12月25日入国管理局から日本の滞在を認めるという判決が下されました。
そして今回、私、福永愛美が総合格闘家のエンセン井上さんに取材させていただき、今の心境、今後について語って頂きました(取材日:2009年12月28日)
取材内容
- 福永愛美
- -はじめまして
- エンセン井上
- -はじめまして
- 福永愛美
- -普段はどんな生活をしていますか?
- エンセン井上
- -普段は練習の事ばかり考えているかな、朝走る時間についてとか・・あと自分の事を綴った本を書てます。
- あと普段、自由にしていて怒られることはないね、おかあさんくらいかな、それがいけないのかもしれないね(笑
- 福永愛美
- -逮捕されてから得たもの、失ったものはありますか?
- エンセン井上
- -2009年12月25日に日本の滞在を認められて今だから言えるけど、自分にとって逮捕された経験は自分の人生ですごくいいこと、捕まってない場合だと永住権があるだけでなにもすばらしいこと気づかなかった。
- 深い付き合いをしていると思っていた人には逮捕されたことで距離を置かれたり、そうでもないと思っていた人が深い付き合いをしていたんだと気づかされたり。そういうことがあって心がおれそうになった。深い付き合いをしていると思っていた人に自分が体を張っていたかもしれないとおもうと・・今後は深い関係の人としかつきあわない。
- これからは大和魂の人生がしたい、ちゃんとした理由があればいつでも死ねます。男として大事なことを守るためであれば・・・
- 今は生きることが楽しくなった怒ることが少なくなって、笑うことが多くなった。
- 福永愛美
- -性格が変わったんですか?
- エンセン井上
- -そうそう性格がかわった、簡単なものを感謝するようになった。雨も感謝するし、富士山を通る時に見えると感謝する。以前は雨が降っているとすごくいやだった、でも雨が降ると緑、木、花にとってはいいものでしょ?留置場にある運動っていう部屋の天井に小さい窓があって、外がそれしかみることができない。
- 福永愛美
- -そこしかお外は見えないんですか?
- エンセン井上
- -そう外はそれしか見えない。運動の部屋に行ったときに天井を見ながら、今日はどんな天気かな?晴れてるかな? ある時雨が降っていて、その窓を通してあめが顔に当たった。ふつうは雨が降ると嫌だなと思うけど、そのまま「あー雨だ!気持ちいい」って雨にも感謝した。
- とにかく感謝するものがすっごく増えた。自由にも感謝している。
- たとえば六本木を歩いてたとしてコンビニに行ったり、ドンキホーテに行ったりできることがすごくラッキーなことだと以前は思わなかった。
- 「コンビニに入ろうかな?どうしようかな?」っていう判断を取れることもすばらしい。今は渋滞の中でもいらいらしないしね。
- 福永愛美
- -すごい変化ですね?
- エンセン井上
- -すごい変化だね、今のエンセンには逮捕されていかったらなってはいない。
- マスコミには色々と悪く書かれて、評判は下がっちゃったんだけど、自分は現役じゃない、だからエンセンの試合をみたくなる人が今後増える必要はない、自分に一回もあったことがないひとや個人的に話したことがない人に「あいつは良くない、刺青もいっぱいある、大麻もやった最低な人」そういう風に思われても別にかまわない。自分の事を本当に知っている人だけわかってくれればそれでいいと思う。
- 福永愛美
- -来年は戦うつもりですか?
- エンセン井上
- -うんそのつもり。
- 選手がよく言うじゃない?マイクで「あなた達の力でがんばった、ファンの応援があったからがんばった」って、それは全部うそだよ、試合は死ぬ気でやるし、トレーニングはつらい、体が動かなくてもハードなトレーニングをしなくてはいけないし、指が折れていても試合前は休む事が出来ない、指を折っただけで試合が中止になるのは悲しいし試合のために練習するから体はボロボロになる。
- 練習するのはファンのためにやるわけがない、試合で負けている時ファンが応援するからといって復活するわけがない。 以前引退したときも自分のために引退した、自分にスタミナがなくなったのが嫌だったから。
- でも、今はそうじゃないファンのために熱い試合を見せようとおもっている。
- 入国管理局の問題のときにファン9000人が署名をしてくれて、日本にいることができたのは90パーセントが署名の力。ファンのおかげで心から大好きな日本にいることができた。
- ファンから「もう一回大和魂を見せてほしい」「最近は格闘技がスポーツになっているから男の勝負が見たい、見せてください」っていう声がよくきこえてくる。
- ファンにありがとうございましたと言いたい気持ちはやっぱり、ファンが望んでいることをする。死ぬほど練習して、死んでもいいという気持ちでリングにあがって、死んでもいいという気持ちでなぐりあうことでファンに返すべきなのかなって、ファンのためにもう一回熱い試合見せようとおもっている。
- 半年後にベストに持っていけるように・・・
- 福永愛美
- -大和魂の試合をするんですか?
- エンセン井上
- -そう絶対する。大和魂の試合になったら幸せ。必ず試合の一か月前から審判に話に行きます。「おれの試合は止めないでください」って・・・早めに止める試合が多いでしょ?
- 格闘技で一番かっこいいのは勝つよりも、男が痛みをこらえているとか、やられてるのにカムバックするとか、どんなにボコボコにされても我慢するとか。それが最近ではちょうど勝負が盛り上がる、深くなる時にストップがかかる。あぶないから・・・
- 今、総合格闘技が有名になって色々なスポンサーもついてきて、スポンサーのイメージもあるんじゃないのかな?ひどいスポーツに協力するのはよくないとか・・
- スポーツになってしまったためにルールが増えたりしてさみしいね。
- 福永愛美
- -みんなエンセンさんに期待してますね。
- エンセン井上
- -俺ががリングに上がるとしたらあんまり見たことのない試合しますから、勝ち負けは約束しない、勝ち負けはどうでもいい、絶対引かない、絶対つぶされたらつぶしにかかる、殺すか殺されるかの試合。
- 福永愛美
- -署名をくれたファンの方にメッセージをいただけますか?
- エンセン井上
- -今は家族も作らない、一族しかない。自分の人生がいつ終わるかわからない。自分が死ぬまでやりたいことは、自分の一族、自分を応援してもらっている大事なファンにインパクトさせたい。
- エンセン井上が地球にいなくなったとしても、ファンが仕事で辛くなって家族のために頑張んなくちゃいけない時にエンセンの試合を思い出して、話す内容を思い出して、大和魂を持って、いやでも辛くても頑張らなくちゃいけないという気持ちがでてくれたら自分は天国で笑顔だね。
- 自分の人生はファンやいろんな人を手伝うためにあると思っている。
- ファンに対しては本当に署名してくれて大好きな日本に入れることを本当に感謝してます。感謝見せるのは言葉じゃなくて自分はファンの感動する事、ファンが望むこと、熱い試合、大和魂の試合を見せたい
- 「エンセンの試合を見て頑張ろうと思った」とかブログにコメントされると俺も頑張りたくなる。
- 軽くないですよ、みんなは軽く思ってるとおもうけど・・・
- ファンへのメッセージは「がんばります」
- 福永愛美
- -今日はありがとうございました
- エンセン井上
- -ありがとうございました。おつかれさまです。
今回のインタビューについて
印象深かったのは『今だけ・お金だけ・自分だけ』といった生き方が多くなっている世の中で、大切なものを見極めてそれ信じ、一途に大切なものを守っていこうというエンセンさんの決意の固さでした。 「逮捕されたことは自分にとってすごくいい経験だった」とお話していただきましたが、きっかけがどういう形であったとしても、大きな変化をエンセンさんにもたらし、エンセンさんの周りの方々にも今後大きな影響を与えていくのではないでしょうか? 何もかもが当たり前のように便利になってしまっている日本では感謝する事から遠ざかりがちです。今回のインタビューでは言葉以上に大切なメッセージを与えてくれたように思います。 エンセン井上さん、そして今回このインタビューをさせて頂いた関係者の方々にこの場をお借りしてお礼を申し上げます。
福永愛美
- 【備考】
スチール撮影:稲田僑晃
取材場所:東大宮
配信日:2010年1月8日
取材協力:株式会社トクタケ
配信・編集:Acmak (エーシーマック)
企画:エフスタイル有限会社(代表取締役 北川要)